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2018.11.16
ドラマの中の税金②
とある週末の昼間にテレビをつけたら、懐かしいドラマの再放送をしていました。
もう何十年も続いた中華料理屋や小料理屋が出ているファミリードラマ。最近は連続ものではないですが、たまに特別ドラマとして放送しているようです。
どうやら今回のお話しは、
「小料理屋を営んでいた主人が亡くなり相続を迎え、相続人である5人の娘たち(といっても、みんな、いい歳です)は、店を売却しようかと考えたが、主人の孫娘がその店を引き受けたいと言い出した。そこで個人事業だった店を、娘たちが相続した財産を投資することにより法人化を行った。それから一年が経ちました・・・」
「そして、法人の会計年度第1期をめでたく終了し、5人の娘たち(株主)に、100万円ずつ配当が配られた」のだそうです。
そこで、今回はこのドラマの中の「配当」について考えてみたいと思います。
まず、設立から1期で500万円の配当を出すなど、どれだけ儲かってるんだ・・・というのがナチュラルな感想です。配当は、法人税等の税金を納付した後の利益から行うものです。まさか利益を丸ごと配当するわけではあるまいし・・・。
まあそれはそれでいいとして、「一人あたり配当100万円受け取った!」ことをベースに話が進んでいくところに、かなりの違和感を覚えます。
①配当を出す時には、源泉徴収をお忘れなく!
まず国内で配当を行う会社は、その支払をする際に所得税を「源泉徴収」する義務があります。配当についての源泉徴収の税率は20%(+0.42%の復興所得税)ですから、各人に100万円の配当を行うのであれば、会社はその金額から【100万円×20.42%=204,200円】の所得税を徴収し、これを原則として配当を行った月の翌月10日までに国に納付します。そのうえで残りの795,800円を各人に支払うのが、あるべき手続きです。もし100万円が源泉徴収後の金額だとすると、配当額は1,256,597円。一株あたりいくらの配当か知りませんが、ずいぶん変な数字になりますね。
やっぱり、この会社は源泉徴収を忘れた・・・と考えるのが自然なようです。
源泉徴収漏れは、会社に税務調査が入った際には更正処分の対象となります。会社が泣く泣く支払うことになりますので、くれぐれもお気を付けください。
②所得税の申告と住民税の徴収が待っている!
さて、源泉徴収があったにせよなかったにせよ、自分たちが出資をした会社から100万円の配当を貰った娘さんたちは、それぞれこの配当について確定申告を行わなければなりません。
(源泉徴収がきちんと行われて入れば、確定申告によって所得税の精算が行われます)。
ところがドラマの中の娘さんたちは、もう100万円の使い道を決めているようです。
「100万円を義理のお母さんの介護費用に充ててもらおう」、「100万円で姉妹全員で海外旅行に行こう」という娘さんもいます。
上場会社の株式ならばいざ知らず、このドラマの会社のような未公開会社から年に10万円以上の配当(一定の計算方式があります)を受け取った場合には、配当所得として確定申告をしなければなりません。そして配当所得に対する課税は、お給料などの他の所得と併せて「総合課税」されます。つまり所得税の累進税率の対象となりますから、所得が多くなればなるほど税率が上がります。
娘さんたちのなかには、しっかり働いてお給料をもらっている人もいますから、それなりの税金が生じます。全額使ってしまったら、あとで20万円くらいは「あし」が出るのではないでしょうか。
一方で確定申告を行えば、所得について一定の計算を行うことにより、配当所得の金額の10%または5%の「配当控除」を受けることもできます。
配当を受け取った娘さんのなかには専業主婦の方もいるようです。配当所得がご主人の確定申告の配偶者控除に影響する可能性もあります。
この方は100万円を元手に喫茶店を開業することを考えているようですが、どうか手元に残る現金を計算して計画を練って頂きたいと思います。
また開業する時には、所轄税務署に開始届や青色申告承認申請書を提出することも忘れてはなりません。
なんとも心もとない5人姉妹です。
会社も受け取る側も、配当には十分注意して下さいね。