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2016.05.27
あらためて、「ふるさと納税」について
先ごろ発生した震災を受けて、被災地である熊本県などにふるさと納税を行うことで、復興を支援しようという動きが活発になっています。
そこで今回はあらためて、ふるさと納税における税金の控除の仕組みと、昨年導入された「ふるさと納税ワンストップ特例」についてご紹介したいと思います。
【税金の控除の仕組み】
ふるさと納税とは、都道府県や市町村といった自治体(地方公共団体)に対して行う寄付金を指します。
ふるさと納税を行った場合、その寄付金は、所得税においては所得税額の計算上「寄付金控除」の対象となり、住民税においては所得割(税額)の計算上、「寄付金税額控除」の対象となります。
したがって、所得税法や住民税法で定められた範囲内の金額の寄付であれば、足切り額の2,000円を除いた全額が、所得税と住民税から控除されることになるのです。
シンプルな例を使って控除の仕組みを算式で表してみましょう。
例:一年間に102,000円のふるさと納税を行った。
*その他の寄付は行っていないものとし、所得税の限界税率*を20.42%、ふるさと納税の総額は、所得税・住民税ともに控除の範囲内であるとします。
*限界税率とは、課税標準に適用される超過累進税率のうち、最も高い税率を意味します。
①所得税における控除額
102,000円-2,000円=100,000円
100,000円×20.42%=20,420円
②住民税における控除額
A. 基本控除額
102,000円-2,000円=100,000円
100,000円×10%=10,000円 ・・・基本控除額
B. 特例控除額
102,000円-2,000円=100,000円
100,000円×(90%-20.42%)=69,580円・・・特例控除額(所得に係る住民税の20%を限度)
このように、ふるさと納税の総額から足切り額の2,000円を除いた100,000円に、太字で示した割合(トータルで100%となる)を乗じることにより、100,000万円全額(20,420円+10,000円+69,580円)が、所得税と住民税を通じて控除されます。
また所得税の控除額の計算では、限界税率が適用されますから、この税率相当額の税額控除を受けるのと同じ効果が生じます。
ふるさと納税というと、とかく「住民税の控除」の部分が注目されがちですが、このように、所得税でも寄付金控除の制度を通じて、寄付額のうちかなりの部分が控除されます(①)。また、住民税の基本控除額の部分(②A)は、ふるさと納税に限定されるものではありません。ふるさと納税に特徴的なのは、②Bの特別控除の部分です。なおこの特別控除額については昨年改正があり、平成28年度より、限度額が所得に係る住民税の10%から20%に引き上げられました。
【ふるさと納税で受け取った謝礼の税務上の取り扱い】
ふるさと納税を行うと、謝礼として地方自治体から物品が送られてくることが多々あります。また、謝礼を目当てにふるさと納税を行う納税者も多いことでしょう。では、謝礼は所得税の申告上、どのように取り扱えばよいのでしょうか。
ふるさと納税の謝礼は、非課税というわけではありません。所得税法上は「法人から個人への贈与」に該当しますので、一時所得として所得税の確定申告の対象になります。しかし、一時所得では、「その年の一時所得の総額が50万円であれば課税の対象としない」という特別控除のルールがありますので、同じ年に、保険金の受け取りなど、他に一時所得に該当するものがなければ、多くの場合には課税の対象にならないと考えられます。
しかし、同一年中に保険金の受取りがある場合や、高額所得者が多額のふるさと納税を行う場合などは、注意が必要です。謝礼の金額は不明なことが多いですが、ふるさと納税により受け取った謝礼の金額を、概算で一時所得に計上する必要があります。
【ふるさと納税ワンストップ特例】
サラリーマンの方など、ふるさと納税額について寄付金控除の適用を受ける以外には住民税の申告書の提出を必要としないと見込まれる人(申告特例対象寄付者)が平成27年4月1日以降にふるさと納税を行う場合には、寄附を行うときに、個人住民税課税市区町村に対する寄附の控除申請を寄付者に代わって行うように、寄付先の都道府県や市区町村に要請できることになりました。
この特例の適用を受けるためには、寄付の都度、寄付先に申告特例申請書など必要な書類を提出する必要があります。また、寄付先の自治体の数は5以下でなければならず、これを超えた場合、手続きは無効になります。
なお、この申請書の提出は、翌年の1月10日までに行わなければなりませんから、注意が必要です。