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2016.07.08
主婦でも使えるようになる、個人型確定拠出年金制度
2001年、長引く平成不況のなか、年金拠出額の増加による企業業績の悪化という問題を解決し、先行きが不透明な公的年金制度を保管する仕組みとして導入された確定拠出年金制度(DC)。導入当時は日本版401Kなどといわれ、新聞や雑誌などで大きく取り上げられました。
この確定拠出年金制度については、先ごろ改正が行われ、平成29年1月からは加入できる対象者が広げられるなど、従来に比べて使いやすい制度になります。また、確定拠出年金制度は、税制面でも有利な制度ですので、この機会に制度を簡単におさらいし、今回の主な改正点、税制上の優遇措置、加入する際の注意点などを解説したいと思います。
【確定拠出年金制度とは】
企業年金の制度には、確定給付年金と確定拠出年金があります。
確定給付年金は、加入者(従業員)の勤務期間や給与などにより、支払年金額が確定する年金です。この制度では、企業は年金資金を拠出し、その資金を金融市場などで運用することにより加入者に支払う年金資産を確保しなければなりません。しかし経済状況が低迷する際には、年金資金の運用が予測通りにいかず、年金の支払いが企業の財務状況を逼迫することになります。
この問題を解決するのが、確定拠出年金です。この制度では、企業があらかじめ決められた額の年金資金を拠出し、その運用は加入者個人に任せます。したがって、企業は年金資金を拠出さえすればよく、将来の年金支払い額の確保に煩わされることがなくなります。
このように、勤務する企業が年金資金を拠出して個々の従業員が自己責任のもとに資金を運用する確定拠出年金を企業型DCと言いますが、これとは別に、自営業者などの個人が自己資金を年金資金として拠出して運用する、個人型DCというものがあります。
派遣社員やパートタイマーなど就業形態が多様化する今日では、企業型DCの加入者は限定されます。また経済状況が不透明さを増し将来の公的年金の受給額について不安が高まる今日の状況を考えると、私たち老後資金の獲得について個人型DCの果たす役割は大きいといえるでしょう。
【確定拠出年金制度の改正】
経済状況が低迷し続ける今日、国としては老後資金の確保に対する個人の継続的な自助努力を支援したいところです。そこで確定拠出年金制度について、先ごろ改正が行われました。
今回の改正のポイントは、以下の5点です。
①個人型DCの加入対象者の拡大
②中小企業向けの新制度の創設
③異なる年金制度の間での資産の持ち運びの拡充
④掛金限度額の年単位化
⑤企業型DCにおける運用商品の見直し
このうち個人型DCにとって特に重要な改正点は、①個人型DCの加入可能範囲の拡大です。
これまで個人型DCに加入できる対象者は、自営業者の方などに限られていました。しかし平成29年1月からは、DC以外の企業年金を実施している企業にお勤めの方や公務員などの共済加入者、専業主婦の方などの第3号被保険者も、個人型DCに加入できるようになります。また、既に企業型DCを実施している企業では、規約に定めることにより個人型DCにも加入することが可能になります。60歳未満の方であれば、基本的にすべての方が個人型DCに加入できるようになると考えてよいでしょう。
【税制上の優遇措置】
個人型DCについては、次のような税制上の優遇措置が設けられています。
①資金拠出時
年間拠出限度額(専業主婦など第3号保険者であれば27万6,000円)の範囲内で、全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。その結果、所得税(掛金×超過累進税率)と住民税(掛金×10%)分の税金が安くなります。
②運用時
運用益は非課税で再投資できます。また、NISAのように運用期間が限定されていませんから、節税効果は大きくなります。
③資産受取時
年金として受け取る場合には、雑所得として課税されますので、公的年金等として所得控除の対象になります。また一時金として受け取る場合には、退職所得として一定の計算式により他の所得とは別に課税されますので、税務上大変有利になります。
【加入する際の注意点】
現在、多くの金融機関や保険会社が個人型DC向けの商品を取り扱っています。金融機関によって口座管理料や運用できる商品ラインアップも異なりますから、加入の際にはランニングコストを慎重に比較して、納得できる商品を選択することをお勧めします。
また、NISAとは異なり、個人型DCの運用資産は、60歳になるまで引き出すことができません。あくまでも老後資金を自分で作るという意識で運用して下さい。
もちろん、運用は自己責任のもとに行います。運用成績によって年金資産が目減りしてしまうこともありますので、専門家などの意見を聞きながら、慎重に運用して下さい。
公的年金制度の将来に懸念が高まる今日、個人型確定拠出年金制度は、将来の生活資金を確保するうえで欠かせない制度です。税制上のメリットもありますので、ぜひ一度利用を検討されてはいかがでしょうか?